Yokohama Citizen's Radioactivity Measuring Station

2016年4月23日 更新

横浜市民測定所の測定結果分析体制について

分析の目的

当測定所で使用する測定器(ATOMTEX社製AT1320A)から出された放射性物質測定結果を専任の分析担当者が分析、確認することで、測定値の妥当性、信頼性を確保することを目的とする。
どのような測定器であっても、検体の性質や測定環境の要因で誤検出(人工放射性物質と天然に存在する放射性物質の誤認や、環境雑音の影響による核種の誤検出等)の可能性を持っており、これらを可能な限り排除するために、測定結果は必ず、専任担当者の確認、分析を経る手順となっている。


分析体制

分析は:

  • 目視による測定結果スペクトル分析
  • 独自の解析ソフトによる測定結果スペクトル分析
  • 環境に存在する137Csと134Csの理論値と、検出されたCs濃度との比較検証
  • 検体の性質による天然核種の誤認の可能性の検討
  • その他

等、多角的に行うことで、測定結果の信頼性を高める努力をしている。


測定値自体の精度向上への取り組み

当測定所で使用する測定器の精度を検証、確認するために、以下の取り組みを実施している。

  • 毎朝の測定器校正と各測定におけるスペクトルドリフトチェック
    校正用試料として用意されている40Kのピーク位置ズレが確認された測定については、40Kピーク位置合わせをやり直して再測定を行う。
  • バックグラウンド放射線(環境放射線のこと。以下BGとする)の影響の継続的調査
    定期的にBGを取り直すことで、BGの継時変化情報を蓄積するとともに、測定結果への影響についての検証を行っている。
  • 精度の高い測定器との同一検体測定結果の相互確認
    professorhonda01
    東京都市大学 工学部 原子力安全工学科 理学博士であられた本多照幸教授(写真上)には、精度の高いゲルマニウム検出器での測定結果の相互確認を行うために低レベル放射能の校正用検体の作成について監修していただくなど、多大なるご協力をいただいた。


    また、測定値の信頼度を高めるため、河野益近氏(京都大学大学院工学研究科原子核工学)には、ゲルマニウム検出器による測定での相互確認で多大なるご協力をいただいている。professorsaneyosshi01

    東京工業大学 放射線総合センターの実吉敬二氏には、測定器の選定からご相談に乗っていただき、ゲルマニウム検出器による測定での相互確認でもご協力をいただいている(写真:2011年12月に開催された「放射能測定講座」にて。参加者が持ち寄った線量計で飯館村の土を測っている様子)。

     


他市民測定所との情報交換等

日本全国の市民測定所の技術力、測定能力向上につなげるべく、各測定所との情報交換を活発に行っている。

  • facebookでの活動
    facebook上にある非公開のコミュニティーにおいて、日本全国の向上心溢れる市民測定所同士で、測定結果や誤検出情報、当該測定器の「クセ」等のノウハウの共有を行っている。
    また、全国地方自治体の測定動向の把握や自治体発表の測定結果の紹介、共有等も行っている。
  • メーカーへの要望改善提案と交渉における協力体制の確立
    同じメーカーの測定器を使う測定所同士で情報交換することで、当該機器についての要望改善点等を取りまとめてメーカーに提案する等、測定所間の協力体制の確立にも努めている。

測定結果の即時共有システム

測定結果を分析する担当者は、測定所には常駐していない。よって、即時に測定結果を共有できるシステムの整備が急務であった。また、横浜市民測定所は磯子(現在は西区へ移設)と東林間の二箇所に測定室があり、効率よい測定結果の分析管理のためには、測定結果を一元管理する必要がある。
弊測定所では、円滑な測定業務を実現すべく、正式開所前に即時に測定結果を共有することのできるシステムを整備した。


測定結果即時登録システム

測定結果を PC の所定のフォルダに入れることで、インターネット上に用意された専用サーバに測定結果が登録され、同時に、メールで運営メンバーに測定結果概要が配信される。
分析担当者を含め運営メンバーは、インターネットへの接続環境があればどこに居ても PC やスマートフォン、一部の携帯電話を利用することで測定結果を参照することが可能である。
測定結果登録用のサーバは、一般会員向け公開サーバとは物理的に異なり、万一にも分析担当者のチェックが行われる以前の生結果が、一般に公開されることの無いように配慮されている。


分析支援ツールの開発

効率よく分析を進めるため、いくつかの分析ツールを独自に開発した。ここに紹介したもの以外にも、各分析担当者が各自で開発した多くの独自ツールが存在する。
以下に紹介するツールは、営利、非営利を問わず、同じ機器を使う測定所で利用することができるフリーウェアとしてインターネット上に公開されている(セシウム減衰量計算機 CalcCs の基本設計は、アイメジャー株式会社信州放射能ラボ代表、一ノ瀬修一氏による)。

スペクトル解析ツール「 ATSViewer 」 セシウム減衰量計算機「 CalcCs 」

測定結果即時登録システムが送信するサマリメール例

From: 横ッ子
To: ycrms_data@****.com
Subject: [ycrms_data:0444] ■横浜測定室:本日の測定データ
Date: Wed, 18 Apr 2012 17:01:06 +0900 (JST)
私は、横浜作業用PCの中で働く「横ッ子bot」です。
2012年04月18日 16時48分までに私が登録した測定データの一覧を、ご報告いたします。
——–
測定No.:I-0420-6 検体名:たけのこ
総Cs:10.5(±2.72) Bq/Kg 測定時間:3600_秒 重量:1034_g
I-131: 0.00 Bq/Kg – % ± 0.00 Bq/Kg – %
* Cs-137: 6.04 Bq/Kg 35 % ± 2.11 Bq/Kg 29 %
* Cs-134: 4.49 Bq/Kg 38 % ± 1.71 Bq/Kg 32 %
* K-40 : 117 Bq/Kg 26 % ± 30 Bq/Kg 16 %
——–
測定No.:I-0418-4 検体名:たけのこ
総Cs:10.5(±2.94) Bq/Kg 測定時間:3600_秒 重量:924_gI-131: 0.00 Bq/Kg – % ± 0.00 Bq/Kg – %
* Cs-137: 4.39 Bq/Kg 48 % ± 2.11 Bq/Kg 44 %
* Cs-134: 6.14 Bq/Kg 33 % ± 2.05 Bq/Kg 27 %
* K-40 : 128 Bq/Kg 26 % ± 33 Bq/Kg 16 %
——–
測定No.:I-0418-5 検体名:たけのこ皮
総Cs:18.9(±4.42) Bq/Kg 測定時間:3600_秒 重量:674_g

I-131: 0.00 Bq/Kg – % ± 0.00 Bq/Kg – %
* Cs-137: 9.75 Bq/Kg 34 % ± 3.35 Bq/Kg 28 %
* Cs-134: 9.10 Bq/Kg 32 % ± 2.89 Bq/Kg 25 %
* K-40 : 137 Bq/Kg 29 % ± 39 Bq/Kg 21 %
——–

以上です。お疲れ様でした!

 

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